kurayami.

暗黒という闇の淵から

一人家焼肉

一人暮らしの男が、家で寂しく焼肉をしちゃいけないなんてルールはない。 むしろ一人だからこそ、家だからこその自由がそこにある。買う肉、焼く肉に文句を言うヤツもいない。焼くペースをいちいち気にする必要がない。焼きそばの気分になれば、突然嵐のよう…

0170721 片瀬海岸江ノ島にて海初心者二人。

21日前夜。逢坂さん(@chihiro_aisaka ‬)と何処に行こうかと一瞬迷った末に、スポッチャを含めた候補の中から江ノ島が選ばれました。今回は、そんなノリの休日の中で逢坂さんが撮ってくれた僕の写真になります。たくさん遊んできました。 初の江ノ電に盛り…

/ワンデイ

ゆめ、夢見てた。 なん、だっけ。 みんな死んじゃったかも。 でも、私は幸せだった。 ん、まだ眠いや。 でも、お風呂入らないと。 仕事に遅刻しちゃう。 蝉が鳴いてる。今年初かも。 眼鏡が見当たらないよ。 あった。レンズ汚い。 私にお似合いね。 お母さん…

スイーツスイーツ

二人の少年が、一つの小さな世界を下方に挟み、対峙していた。 そのうちの一人は、市販の紙マスクで口を隠し、第一ボタンまできっちり閉めた白シャツを着て、上からゆったりめの黒いポンチョを羽織った〈パリパリの白チョコケーキ〉の少年。 もう一人は、恋…

夏の寝床と冬の迷子

扇風機だけが頼りの、蒸し暑い夏の夜。 枕元にある携帯のディスプレイが、ぼんやりと暗闇を明るくした。 一回、そして二回三回と、携帯がモールス信号のように振動する。 また、あの人だ。 もしかしたら別の人かもしれない。あの子かもしれない。だけど、こ…

シカバネテツバット

遠心力が俺に自信を付けてくれる。無力の零から、一人分の命を消せるぐらいには。 何故だか何時からか、俺は家族の教室の町の世間の世界の嫌われモノで、まるで拠り所がなかったんだ。ああ、それは別に良い、嘆く必要はない。自業自得だからだ。俺が容姿端麗…

初夏心中

「ねえ、どこに行こうね」 女子高生の女の子は、隣に座っている男子高校生の男の子に、明日の予定を聞いた。「どこ……どこにしようか。綺麗な、空が見える場所が良い」 男子高校生の男の子は、暗い顔で遠くを見るように、女の子の問いに答える。 二人が座って…

生きること、この世界のこと

突然の天気雨が、過疎化した町に降り注ぐ。私は思わず、だいぶ昔に閉店されたカフェの屋根を借りて、雨宿りをした。夏の熱気を暴力的に冷ますように、雨音が地を心地良く叩いてる。高校の帰り道、少し短い夏服のスカート。 今日は終業式間近だからって、少し…

海の日

海の日。それは、この酷く蒸し暑い七月にうんざりする者たちの、仕事に疲れた一部の社会人の、固定休日が合わない恋人たちの……救済処置的祝日だ。 私はこの全てに該当する。「今年は今まで一番暑い」だなんて年々よく聞くが、そんな文句も許されそうなほど、…

たくさんのハートを

「お前は本当に、怪しからん奴だな」 溜息をついた女が、写真を片手にそう言った。 書斎のような部屋に、机を挟んで女と男が座っていた。「何遍言ったらわかるんだ。無駄に散らかすな、と」 男にとっての常連の依頼主、女……カナシマが写真を机の上に放り投げ…

長机の中で再会

前々から気になってはいた。しかし、入る理由もなかった。 だから、こうして入るのは、同僚の悪ノリだとかそういう理由付けが無ければ、今後ずっとなかっただろう。 新宿、歌舞伎町、その奥。呑み会と水商売のキャッチの賑わいから離れ、静まり返ったラブホ…

フィクション

運が良いことに、私はとても幸せだ。 あの頃は何もなかった気がする。空っぽで何もなくて、ヘラヘラしてれば良いと思っていた。時間の空白への恐怖に麻痺し、目を背け、毒の中で怠惰に堕ちていることにすら気付かないまま。 思い返してみれば、とても恐ろし…

ティーレックスたち

最初に殺されたのは、三年生を担当していた現代国語の教師だった。 それが一昨日のこと。昨日は二年生担当世界史と、三年生担当情報Cの教師が殺された。評判の悪い教師ばっかだな。 まあ、この学校に評判の良い教師なんて、いないだろうけど。大人しめの僕…

嫉妬地獄

刑務所の面会室のような場所に、私は座っていた。 橙色の小さい蛍光灯頼りの暗い部屋。孤独を象徴するような事務的な椅子。あちら側とこちら側を遮断する、厚い厚い硝子窓。 そんな硝子窓の向こう側。ベッドの上で愛しの貴方が全裸になって、知らない女に食…

悪と惡

雨が二日三日と降り続き、恋人たちが口を開けて灰色の空を見上げていた、その日。仕事の疲れが取れず、恋人たちの骨が疲労に悲鳴をあげていた、その日。「あ、れ。ん、あれ」 雨の雫が滴る恋人の男が、家の冷蔵庫を開けて疑問の声を出した。 男の声を聞き、…

いずれアイリスか雪落とし

私の中で芽生え、歪み、枯れることのない、常花なこの……密かな想い。 貴方にとっての〈理解ある女友達〉を演じて、もう四年になります。私が〈高校の部活の後輩〉という、不利な立ち位置から始まったにしては、よくやった方ではないでしょうか。 貴方の恋路…

カフェのあの頃

小さな駅を降りて徒歩七分の場所に、俺のカフェは静かに佇んでいた。 錆びたシャッターを腰を降ろし、思いっきり引き上げる。引っかかるようなうるさい音と共に〈カフェ・シラキ〉と、赤色の文字でプリントされた硝子窓が俺の目の前に現れた。 シラキ。この…

ヒメウツギに保たれる

もう。また、貴方から匂ってる。「ええ、そんな臭いかなあ」 臭くないよ、いつも通り私の好きな匂いだよ。そう言って私は、貴方に抱きついて甘えた。 そうじゃない。ううん、そうじゃないの。そんなことを言ってるわけじゃない。貴方、最近私以外の女と会っ…

夢恋メンタルクリニックでワンペア

「ああ、聞いてください。私ずっと、頭が痛いんです」 女が主治医にそう訴えた。「ふむ。風邪というわけではなさそうですね。というと、やはり……以前仰っていた通り、仕事が辛いですか?」「……ええ、とても。仕事に行くことを考えるたびに、痛みは増していっ…

約束のメトロポリタン

「いらっしゃいませえ。あっ」 バーの扉を開くと、懐かしい顔のバーテンダーが僕を招き入れた。 木曜の夜ということもあってか、客は一人もいない。「盛り上がってますね」「まあな! お前みたいなのが来たらそりゃあ、盛り上がるわ!」 僕の冷やかしを余裕…

言い訳

この揺らぐだけの真っ暗闇の中に篭って、何日が経ったのだろう。 もう、贖罪の意識に覆われ何年が経ったのだろう。 鑑識官だった頃の記憶が、酷く遠く感じる。「おい! やっぱり中から音がしたぞ」 先輩は元気だろうか。強く生きているだろうか。 まあ俺にそ…

蓮のプリムラ

生気を掻き消した十畳の和室の中を、夏の日差しが縁側から伸びて、薄く照らしている。遠くから油蝉の鳴き声がして、目の前の仏壇から涼しげなリンの音が聞こえた。 優木江莉香が死んで、今日で三十五日目。 今日のお参りに、私ともう一人、女の子が来ていた…

「警察官」「電話」「教室」

「なあなあ。噂なんだけどさ」「台所の夕暮れ鯨の話でしょ」「違う違う。全く新しい話」「ふうん。都市伝説ってそんな、ぽんぽん生まれるものだったかな」「いいや、俺とお前が知らなかっただけだ。なんせ今回は、三つもある」「へえ、三つも。ああ、三つ、…

灯台までの泳ぎ方

人には大きく分けて、二種類の人間がいる。 この大海原という人生を、上手く泳げる人間と〈泳げない人間〉だ。 そして「人には大きく~」なんて上手く扱えないような例え方をする俺は、泳げない側の、人間だった。 ガキの頃からそうだった。何をしても失敗と…

体重

「へえ、結構綺麗な部屋じゃん」 少し酒に酔った彼女は、僕の部屋を見渡して言った。そんな彼女を見ながら、蛇口を捻りコップに水を注ぐ。僕も、酒に酔わされていたから。「駅から遠い分、しんどいし不便だけどね」「えーでも、駅からここまでいろんなお店が…

見ぃぅぇぁ

ねえ、ね……ぇ。聞こえますか。ワタシの……ぇ聞こえますか。見えていますか。ずっと貴方に……ぅして、話しかけるのは、もう…………ぃ目に、なるのですが。まだワタシを、見……ぇくれないのですか。ええ、それ……ぇも大丈……ぅです。もう慣れま……ぃたから。それにもう…

ウェンディガール

「大丈夫、心配しないで」 私は彼が投げつけて割った白い皿の破片を、怪我をしないように拾った。「何が……何が大丈夫なんだよ」 彼は声を荒あげて怒る。ああ、すぐにでも、何か物を壊しそうな勢いだ。そう察した私は、静かに彼に近付いて抱き寄せる。「うん…

胃の中の余命

医師に余命四年を宣告されたとき、僕は「まだ結構あるな」と感じた。 長いようで、短いような。そんなことを考えながら、彼女との待ち合わせ場所に向かう。「死んだりしたら駄目だよ、約束だからね」そう、彼女が言っていた から重要なことだと思って、告げ…

Hの怒り/一人も残さない

燃え盛る炎の中で、男は愛する恋人を手に掛けていた。 男の拳は恋人の胸を抉り、中の内臓を引きずり出し黒く焼いている。嗅いだことのない臭いが、男の鼻についた。 男はその殺害を望んでいなかった。意思とは関係なしに暴走する身体。全ては奴らの仕業。「…

罰を産む

僕が二十五歳になったその日。朝一でソレは届いた。 〈歳を取ってから会話した人一号〉となった配達のお兄さんに、おはようございますと笑顔で挨拶し、受け取った赤いペンで書き慣れた姓をサインして荷物を受け取る。 ソレは、やけに小さな立方体の箱の形を…

雨の旅人

日付が変わり、空が闇に覆われる少し前。子供は眠る時間。 南に位置する、魔法使いたちが暮らす三角座街。黄色い屋根の下でのこと。「ほら、はやく眠らないと憂いの王が攫いに来るぞ」 父親らしき男が、ベッドに腰を掛けた息子に対して、諭すように優しく言…

コンテニュー

数多の流れ星が降り注ぎ続ける、世界の果て。そこに生まれたのは、世の全てを暗闇に飲み込む憂いの王だった。 このままでは世界の希望が絶やされてしまう。そのことを恐れたアルピレオ国王は夢の言い伝えにある、最後の希望〈月に魅入られし勇気を灯す者〉を…

狭い青空と黒いシルエット

この紅煉瓦の街では、よく雨が降る。 故に、傘を常備する住人が多かった。ああ、雨のことなんて知らずに訪れた旅人がよく、しかめっ面をしている。旅人の癖に情報不足なのが悪い。 住人たちは傘派と、折りたたみ傘派と大きく二つに別れる。その他の人たちは…

夢見の藍少年は紅色幻に醒まされる

朝の光が、白いカーテンを通して部屋を眩く染めている。 ベッドに小さく腰を掛け、血と、溜め息を吐いたのは、紅色が似合う“少女”姿。 対して、その足元に座り込み、めそめそと涙を流すのは、藍色が似合う少年。 世界はまるで、二人以外が眠っている夢みたい…

無骨な彼

「あの、あの、ちょっといいですか」 午後十時の街角。疲れ切った身体が無意識に癒しを求める時間。 私はたまたま通り掛かったスーツ姿のお兄さんの、その長い指が気になって引き止めた。 お兄さんは、警戒もせずに振り向く。「なんでしょう?」 優しそうで…

すりる

昼に付けっ放しの灯のような、何処か、間抜けなヤツ。 俺がアイツと初めて出会ったのは、高校二年生のクラス替えのとき。アイツ……津田沼優一の席は、竹中である俺の後ろの席だった。 俺が話好きで津田沼が聞き上手ということもあって、しょっちゅう後ろを向…

蔑ろにしないで

東京都世田谷区、古いマンションの最上階、空き部屋に挟まれたその部屋。 男が、最後の段ボールを片付けた。新居に積まれていた段ボールの小山は無くなり、男の私物と趣味に溢れた男の城が出来上がっている。 男はリビングに立ち、周りを見渡した。小物の配…

青空と風

「貴方と二人で旅がしたい。いや、しましょう」 僕の方を見ないで、彼女がそう言った。この見晴らしの良い、学校の屋上から。フェンスの外側で。 不気味な青空が、どこまでも広がっていた。敢えて今が何時だとかは言わないし、考えない。 ただ、空が青いだけ…

カムヒア

「おいで」 そう咄嗟に言ってしまったのは、きっと飼い猫たちに日常的に言っていたから、だと思う。 あの時の、私が呼んでしまったときの、貴方の顔を覚えている。 どうしたらいいかわからないのか、恥ずかしそうで、そしてなんだか、悔しそうだった。「なん…

夢見る者たちの外側

〈二百年に渡る雪の厄災〉が終わって、一年。 世界が数百年ぶりに青空を見せてから、一週間。 人類の調査が始まってから、百九十三日目 「えーこちら、ニーシチ。ニーシチ。近辺が川だったと思われるエリアに入りました。新しい種子の採集が期待出来そうです…

サナギ

夏の陽射しが、私に鋭く刺さって苦しめている。身体の外と内側から熱を放出して、貴重な水分を汗に変える。 そんな熱の悪魔が、私の目的を一瞬だけ掻き消して、十字路の真ん中で足が止まった。 私は、何処へ向かっているんだっけ。「お姉ちゃん、もしかして…

神性殺害失敗

唯一無二、僕だけの、最愛の恋人だ。 艶のある首までの黒い髪。鎖骨下の誘惑の黒子。黒とワンピースが良く似合う、その白い肌。ナチュラルメイクと浮いた紅色の唇。筋の通った高い鼻。堀の深い見透かしたような〈笑み〉が似合わない瞳。 そんな魔女のように…

季節外れの青春

まるで時間が、巻き戻ったかのようだった。枯れてセピア色になりかけていたものが、十三年ぶりに鮮明となって返り咲いて、今私の目の前に存在している。 ミルクティー色のカーディガンの袖に、手の甲が隠れた彼は、私の部屋で勉強をしていた。テストが近いと…

窓の中

確実に座れることを望んで僕は、夜の池袋駅丸ノ内線のホームに来ていた。 赤いラインの入った列車は既にホームに入っていて、中には疎らに人が座っている。 僕は時間潰しも兼ねて、一番奥の車両まで歩いた。列車は、動く気配が全くない。 辿り着いた奥の車両…

生解

「あの、もし良ければお話、大丈夫でしょうか」 早朝、空が白み始めた頃。 広い河原の土手に座り込んでいた俺は、若い男の声に振り返った。 そこに立っていたのは、古い学帽と学ランに身を包んだ学生風の男。顔は童顔で、身長は低かった。まるで男子中学生の…

白み始めた終

いつまで経っても、夢の中へ落ちることはなかった。 寝苦しさのせいでもなく、暑さや寒さでもなく、空腹でもない。ただただ、想えば想うほど、眠気から遠ざかっていく。 この夜が明けてしまったら、世界が消滅してしまう。 その事実が、安眠をもたらせない。…

シュガーシンク

可愛いスカートを身に付けた私。目立たない行きつけのカフェ。壁際と窓際の狭間にあるお気に入りの二人席。空が曇り、白いカーテン越しに重たい光が射し込む、憂鬱混じりの木曜午後三時の休息。 私はこのカフェで二番目に好きな、ふわふわのチーズスフレに銀…

見知らぬオリーブ

私が殺人を犯し、山の中へ逃げて四年目のこと。 夕立が降った、初夏のことだった。 天気が変わりやすい山にとって、夕立自体は珍しいものではない。 珍しかったのは、その日の来客だった。 玄関で物音がしたのが気になって覗いてみれば、少年が雨宿りをして…

愛憎劇“心の形”

人に溢れた街。流れに、信号に、暑さ涼しさに。都合に左右されて、人々が動いている。 揺れる心を、頭上に浮かして。 私には、人の心が、形になって見えるの。 初めて見えるようになったのは、中学生のときだった。思春期の真っ只中、性に将来に友人に親に恋…

ソウルプロット

雨が上がって、まだ間もない公園。正確には、雨が今だけ止んで、曇り空の隙間から青空が覗く、晴れ間の公園。俺は屋根付きのベンチで、雨宿りをしていた。 今のうちに帰ろうと、ベンチを立った時。その男は〈雨の隙間〉から抜け出したかのように、俺の前に現…