kurayami.

暗黒という闇の淵から

三題噺

/虚

この空は セロハンを重ねた色 空は 硝子色 硝子色は 気まぐれ 気まぐれなら 猫っ毛 あの空に 色彩なんてなかった この月は 太陽の輝き 月は 白熱灯 白熱灯は 溶けていく 溶けていくなら アイスクリーム あの月に 光なんかない この星に 僕らの街があって 星…

ドロップ

落し物をした。 雪が積もった杉林の中に、僕は落し物をした。雪に足を持って行かれて、歩き辛い。昼間に来て正解だったのかもしれない。夜だったらもっと、歩けなかったかもしれない。 落し物は、よくする方だった。特に大切なもの。友達から就職祝いにもら…

クイズゲート

木枯らしの吹く寒い十二月。男は部屋に引き篭もって、インターネットで動画を見ている。動画は、人気アイドルグループ「ハッピード・ラッグ」の看板番組。男はその中でもセンターの隣にいる「掛川聖良」を推している。清純派にはない妖艶で蠱惑的なキャラク…

博士は煮っ転がし

私は純白のドレスを身に纏った、お嫁さん。結婚式を終えたのに未だに脱ぐことができないの。だって、いつまでもお嫁さんであることを忘れたくないから。 私の夫は、解剖学の博士。私はその助手だった。研究熱心だったあの人に一目惚れして、私の猛烈なアタッ…

めざめの国

切れかかった照明、質素な部屋。ビンの中の錠剤が半分なくなっている。眠気を覚ますための、錠剤の形をしたカフェイン。それは、俺にとって永遠の睡眠剤だった。はやく効いてくれ、願うしかない。 そのうち、指先が痺れてきた。なんだか冷たい。ああ、クソだ…

僕の師匠

僕の小学校には新校舎と、旧校舎がある。旧校舎は主に理科室とか、音楽室とか、クラスのための教室とかはなくて、専用の教室しかないんだ。新校舎は真っ白で、角ばってて、エメラルドグリーンの綺麗な廊下が広がっている。 確かに綺麗だけど、僕は旧校舎の方…

真っ赤な頭

ぽん、ぽん、ぽん。可愛いゴムボールが跳ねている。私はそれを、眺めている。私自身、それを眺めているし、射影機が映し出す私の記憶を、大人になった私も見ている。これは、小さい頃の記憶、何歳だったかは覚えていないけれど、ボールが勝手に家の庭で跳ね…

枯れていく

私は花が見たい。 日の光がさす部屋の中。世界を恨むコーネリアがそう呟いて、私に真っ白なコンパクトディスクを渡した。見たい花だなんて、もうこの世界に存在する有機物は、貴方と、あの吸血虫ぐらいですよ。 この世界はもう、吸血虫によって、ほとんどの…

捕縛

時間にして、深夜二時のこと。僕は大学のレポートと対峙していた。その日付の午前中、つまり数時間後に提出のレポート。書くことも思いつかなくなり、僕は一度外に出ることにした。コンビニでもなんでもいい、外に出たかった。一瞬逃げることも大切だと、自…