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kurayami.

暗黒という闇の淵から

肉の山

  どさっと、また人間が落ちて、人間に重なる。
 また、死んでいる人間。元から死んでいたのか、それとも落ちて死んだのかはわからなかった。少なくとも、不自然な方向に曲がっている身体は、俺に死の事実を主張している。
 俺がここに落ちてから、数時間が経った。落ちたところが、運が良かったんだ、ぐちゃぐちゃのゼリー状みたいなとこだった。辺りを見渡す限り、落ちてるものが人間だけということから、あれは腐った人間の塊だったと考えられる。
 冬のような、空だ。高く、青い空。たまに落ちてくる、人間。
 落ちてくる人間は、全裸だった。老若男女、いろいろな人間が落ちてくる。中には赤子もいた。誰が落としていて、何の目的で俺が落とされているのか、わからなかった。そういう俺も、全裸だった。
 意図的か、偶然か、高く高く積まれた、人間の山を見つけ、俺は登る。腕や脚がうまく絡まっていれば崩れないが、場所によっては、ただ人間が重なっているだけで、崩れやすくなっているところもある。俺は慎重に、手足に、手足をかける。
 人間の壁から、頭を一つ突き出した、中年男性の髪に手を絡ませ、少年の腰に片足をかけ、頂上へ登り切る。
 登ってわかったことは、他にも高い山はいくつかあって、見渡す限り、地面は肌色。遠くには、普通じゃありえない大きさの人間の手足が刺さってるように見える。底のない地面に、人間が永遠に重なっているような、無限感。
 ふと、右下に赤色が目に入る。その山の、人間によってできた層の、中腹辺り、真っ赤に染まり、流れている。歩いて近づいてみれば、その中腹の人間たちは、ミンチのようにぐしゃぐしゃになって、血を滝のように、流している。ここに来てからこうなったのだろうか……いや、これは、このミンチの塊ごと、落ちたのでは、なかろうか。あまりにも、整った潰れ方をしているから、もしかしたらそうなのかもしれない。
 すこし歩き疲れて、人間と人間が横に重なった、ベンチ代わりにちょうど良さそうな、若い女性に腰をかける。その女性は、直立に落ちたのか、膝から下が潰れてる程度で、顔は確認できた。整った顔で、俺好みだった。女の肩を、力強く掴んでみる。
 ふと、あることに気づき、女の顔を力強く、殴る。
 落ちてる人間に、なにをしてもいい。それに気づいた。もう一度、力強く殴る、蹴る。気が済むまで暴力をして、女の顔が、潰れた。整った顔とは、言えなくなった。
 殴る、蹴るという行為をして、男は息が上がる。もう一つ、気づき始めていた。歩き疲れ、息が上がる。
 これは、現実だ。

 

妖怪三題噺「人 物 場所」

僕なら「人間 人間 人間」

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