頭が壊れるような爆発音と、眩い閃光。
大地が回転するような衝動と、喜怒哀楽の人の声。
停電のように、全てが突然止まり、音のない世界となる。
強引な静寂と、逃げるような眠気と、
全てを掘り起こす、高熱。
目を覚ますと、冬の高い、灰色の空が、私の瞳に映った。
灰色の雪が、空から降っていて、とっても綺麗だけれど、これで電車が止まったら恨むぞなんて寝呆けて、でも、いい加減目を覚まさないと遅刻すると、焦る。
そこは、何かの、瓦礫の上。
私は、なんでこんなところで寝てしまったのだろうと、身を起こす。身体のあっちこっちが痛くて、自身の寝落ちを恨んだ。
服は愛着のあるブレザーの制服のままで、着替えなくて楽かもしれないと、怠惰なことを思った。
起きて、一言目。何か伝える言葉があった気がするのに、思い出せない。代わりに口から漏れるのは、白い吐息。
それは、世界に対して、誰かに対して言う言葉だったと思う。大切だって、教えられた気もする。
辺りを見渡すと、何かの瓦礫が灰色の雪に飾られていた。
ああ、学校に、行かないと。
私は、通学路だと思うものを辿った。
冬の朝は、とても静かだ。雪が降ると、世界は休息を取るように静かになる。今日は、世界の休日なのかもしれない。
ふと、ある場所で足が止まった。それは、その場所が気になって止まったというよりは、歩いたその距離が「ここにあった」と言うからだ。
大切な誰かがこの位置に住んでいた気がする。
長い時間が積もって出来上がったその想いへの、シルエットしか思い出せない。大切な誰かが、その誰かへの称号が、関係の言葉が、思い出せない。
君。という言葉が頭に浮かんで、すぐに消えた。
でもそれは、とても、当てはまる気がした。
歩いていくうちに、瓦礫はなくなって、私は何を恐れて急いでいたのかを、忘れた。
広がる灰色の地平線は、私が忘れたことを怒るように、威圧的だ。
一体なにをそんな、怒っているの。
私は、私の名前すら思い出せないというのに。
行動、名前、関係性、そんな言葉。
それらを思い出せないということが、なんだか、お腹の辺りでもやっとさせる。
とっても、哀しいんだ。
日が暮れてきて、空の明るさが徐々に弱くなっていく。
私はもう、その光に二度と触れられないと予感をした。動けなくなって、硬くも柔らかくもない地面に、寝っ転がる。
次第に、重い夜の色が、果ての空から這い寄る。
人も、色も、言葉も、その夜に潰されて見えなくなっていく。
感情も、思考も、夜に蝕まれていくけど、どこか、安心した。
頬を伝うものを、何かと思い出せないまま。
言葉が、世界から失われていく。
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〈物語の最後、言葉を失う〉