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kurayami.

暗黒という闇の淵から

月の作り方

n3w 習作

 巨大な、肉塊があった。
 それは正六面体の肉塊。喉を鳴らし、脈を打ち、その意思は疎らでまるで、宇宙のようにバラバラにまとめられいた。
 それを見た世界が、斜めに切断し、二つの三角柱の肉塊に切り分けた。

 三角柱の中身は、姿を変え、骨となり、頑丈さを誇った。
 もう一つの中身は、姿を変え、筋肉となり、力強さを誇った。

 やがて、
 骨だった中身は、花となり。その色を魅せた。
 筋肉だった中身は、星となり、その煌めきを放った。

 花だった中身は、魚へ、限られた自由を楽しんだ。
 星だった中身は、虫へ、限られた時間を楽しんだ。

 魚は、交換日記へ、人形へ、セーラー服へ、化粧へ。ピンクに。
 虫は、運動靴へ、車へ、学生服へ、髭剃りへ。インディゴに。

 ピンクは〈私〉に。
 インディゴは〈僕〉に。
 ……

 

「なあ、どこまで覚えてる?」
 三角柱の中で〈僕〉が、隣の三角柱の〈私〉に尋ねた。
 透明な三角柱が二つ、並んでいる。
「今、思い出せるのは、私が透き通るような、白の少女だった頃かしら」
 〈私〉は遠くを見るように、答えた。
「嘘だね。僕はそんなの見てないぞ」
「あら、私たちに嘘なんて、付けるのかしら。少なくとも疑うことは、できたみたいだけど」
 少し茶化すように〈私〉が言った後、寂しそうに目を伏せた。
「……君はもう、そんな顔が出来るようになったんだね」
「そういう貴方は、とっても、悲しそうな顔してるわよ」
 驚いた顔をして〈私〉が〈僕〉に言った。
 俯く〈僕〉に向かって〈私〉が、両手の親指と人差し指で三角の窓を作り〈僕〉を覗いた。
「なにそれ」
「わからないわ。私の記憶にあったの。きっと、景色を差別化する技術。貴方の気持ちがわかるんじゃないかって」
 〈僕〉も〈私〉に習い、三角の窓を作る。
「どう、見えるかしら?」
「寂しそうに、見えるよ」
「奇遇ね、私も、そう見える」
 二人は、そう呟きあって、また泣いた。
 その三角柱を、涙が満たすまで。

 

 満たされた涙は、二人の姿を変え、その透明な三角柱を破った。
 〈僕〉は王に。賢者に。
 〈私〉は女王に。魔女に。

 賢者は、全てを知り、全知全能の脳へ。〈私〉とずっといられる術を知った。
 魔女は、全てを呪い、不滅の心臓へ。〈僕〉とずっといられる身体を手に入れた。

 全知全能の脳はその姿を精神へと変えた。〈私〉をずっと待った。
 不滅の心臓はその姿を心へと変えた。〈僕〉をずっと待った。

 待ち続けた精神は、長い年月をかけ、暗い下弦の月へ。
 待ち疲れた心は、長い年月をかけ、輝く上弦の月へと変わり果てる。

 空に浮かぶ、二つの半月。
 それを見た世界が、二つを巡り合わせ、大きな一つの月に変えた。
「やっと、一緒になれたね」
「待ち疲れちゃったわ」
 どこまでも、月は暗闇の空へと、落ちていく。
 永遠にどこまでも、二度と離れないまま。

 

nina_three_word.

〈半月〉〈三角〉