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kurayami.

暗黒という闇の淵から

理に反する夕影の教室

 夕方の空き教室。そこに、終えた学校の雰囲気に取り残され、更に尋問のために囚われた男子生徒……片山吉弥が、窓際の席に座っていた。
 そして、その片山と対峙するように、黒板の前に一人の女子生徒……白谷茜が立っていた。はねっ毛のあるショートボブの黒髪、おっとりした顔、地味な化粧、高校生にしては、高い背。
「まだ帰っちゃ、駄目なんすかね」
 片山が椅子を後ろに傾けながら、そう言った。
「駄目だよ。まだ私のこと、好きって言ってないもん」
 白谷が教卓に両手をついて、ゆったりとした声で言った。
「そんなこと、言われてもなあ」
「私のこと、好きじゃない?」
「そうじゃないけど」
「じゃあ好きなんだね」
「あー馬鹿すぎるよー」
 そう言って片山が、机に突っ伏して、隙間からチラッと白谷を見た。窓から伸びた夕陽とのコントラストで、影の中に白谷はいた。馬鹿という言葉にも、口角を上げている。
「そうだね、馬鹿なんだと思うよ。でも、こんなことに付き合う片山君も、馬鹿だと思うけどなあ」
「好きな相手に、普通そんなこと言うかな」
 顔を上げる片山。
「別に好きになるという事は、酷いことを言わないって事じゃないよ。だから、片山君が私を好きだという可能性もまだ残ってる」
「うーん」
 また、頭を下げる片山。
「そうだなあ。じゃあまず、この前、私は自販機の前で片山君に、三十円あげたよね」
「貰いました」
「私のこと、好き?」
「ええ、それは……ずるくないか」
 白谷は、教壇を端から端へ、手を後ろに組んで歩く。
「ずるくないよ。私のこと好きになる可能性だもん」
 そう言って、窓側、教壇の端で止まり、続けて言った。
「例えそれが、純粋じゃなくても」
 片山が難しい顔をして、自身を見る白谷から目を逸らすように、窓の外を見る。
「んーじゃあ、片山くんはどんな見た目の人が好き?」
「可愛くて胸の大きい子」
「嘘つき、背が高い人も、好みでしょう」
 白谷がその高い背で、つま先立ちをして、そう言った。
「なんで、知ってるかな」
「知ってるよ。じゃあ、片山くんはどんな性格の子が好き?」
「……真面目で、一生懸命な、子」
「ふふ、それも嘘つきだ」
 一歩、一歩と、会話に合わせて白谷が片山に近付く。
「都合の良い子が、一番のくせに」
 片山は、白谷を見れなかった。否定も、出来なかった。
「桑野さんのこと、好きでしょう」
 白谷は、片山の席の前に立っている。
「誰が、好きな人は一人だって、決めたの?」
 ゆっくりと、一音一音、片山に聞かすように、白谷が耳元で呟く。
「ねえ、私のこと、好き?」
 片山が、重い口を開く。

 

 

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〈 誘導尋問 〉