「何処に行けばいいの」
希望のない明日に解き放たれ、路頭に迷う少女。
望んだ自由。
支えのない未来。
目に慣れることが一生ないであろう暗闇の中を、少女は手探りに進む。
少女を引く手は、もうない。何処までも何処までも、漠然とした不安に心をミンチにされながら、ゾンビのように這うだけ。
「やっぱり、少しだけ、寂しいなあ」
少しだけ……自身で言ったその言葉に少し疑問を持った時。暗闇の中、少女は微かな光を見つけた。
少女は小学校からの知り合いと、よく連絡を取るようになった。
同性の知り合いは、休日には一緒に買い物に出掛けるようになり、少女にとって、友達とも言える存在になりつつあった。
しかし、そこにあったのは都合の良い距離感だけ。知り合いが求めるものは、空いた時間を埋める存在。
微かな光は、失われた。
少女は再び、暗闇の道を進むこととなる。
次に見つけた光は、鋭く強かった。
少女は部活動に誘われ、入部する。
その曜日、その教室に行けば会える存在たちに、少女は半ば安心する。
しかし、互いを互いに必要とするだけ、強要される意味のない時間に少女は耐えられなくなり、その鋭い光の元を、自ら離れた。
「結局、都合が良い存在が欲しいのは、私もなんだろうか」
ふと、少女は〈あの頃〉と〈貴方〉を思い出す。
しかし、首を振り、再び、暗闇を進み始めた。
自由を求め離れたのは私なのだからと、繰り返し呟いて。
少女は、自ら光を作ることにした。
スケッチブックとペンを持ち、誰に見せるわけでもなく、そこに自己満足に自身の世界を描いた。
少女にとって、絵は光とまではならなかったが、それは暖かく、力となって暗闇への背中を押す。
時が経ち、少女が〈少女〉である期限の末、その頃。
少女は気まぐれに仲良くなった少年に、心を開こうとしていた。
年相応の、発見と共有。純粋な距離感。
側にいるとくすぐったい。絵を褒められると、嬉しくて幸せ。少年の仕草が愛おしい。
やっと見つけた、少女にとっての光。
しかし、少年の姿に重なるのは〈貴方〉だった。
「何処までも付き纏う〈貴方〉が、私を光に触れさせない。まるで呪いのように」
少女は混入する記憶と日々が噛み合わず、少年を突き離し、再び暗闇の道を歩んでいく。
少女は強くなっていた。強く……飢えていた。
手探りで進んでいた道を、少女は迷いなく、真っ直ぐ進む。
「誰よりも毒で、甘味で、私にとっての闇である〈貴方〉の元へ」
何処までも深淵の底。漆黒で、暗闇のずっと奥。
〈貴方〉はまるで、デートの待ち合わせに遅れた少女を迎えるように、口を開いた。
「おかえり」
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最初、又は最後に〈おかえり〉