刑務所の面会室のような場所に、私は座っていた。
橙色の小さい蛍光灯頼りの暗い部屋。孤独を象徴するような事務的な椅子。あちら側とこちら側を遮断する、厚い厚い硝子窓。
そんな硝子窓の向こう側。ベッドの上で愛しの貴方が全裸になって、知らない女に食べられるように、太腿を舐められていた。
天井の照明が唾液に反射して、舐められた分だけ彼の肌の上で線になってよく見える。
どうやら向こう側から、こちら側は見えないらしい。
そして私は固定されたように動けず、声も出せず、その光景から目を離せないでいた。
女が再び、今度は彼の首を、甘噛みして舐めている。彼が気持ちよさそうに目を細めている。彼が女を、受け入れて、いる。
ああ、ここが刑務所だと言うなら、罪人はきっと私なんでしょうね。
こんな、こんな非情な事実は、私にとっては苦でしかないもの。
死刑よりも終身刑よりも、何よりも苦しくて残酷な罰。
嫉妬に狂い、涙以上に、吐瀉物以上に、何かが溢れ出しそう。
私は一体どんな大罪を犯したのか。ただ普通に、貴方を愛して生きてきた。ただ、ほんの少し目を離して、それで……えっと。
あれ、私、なんで貴方から目を。
そう思考してる間にも彼は、女に食べられ続けている。女が目を閉じて、深く味合うように舐め続けていた。
駄目。その分泌液は私のモノで、お前に舐める権利なんてない。
彼によって紡がれる言葉だって、目をぎゅっと閉じた笑顔も、果てる瞬間も、全て全て私のモノ。私の、モノなのに。
そう、そうだった。私のモノだからって、安心してた。貴方を信じていたからこそ、目を離せた。離すことができたの。
そしたら貴方、いつの間にか他の女に手を出されていて、取り返しのつかない深いところまで堕ちていて、私がそれを解く隙もなくて。
離そうにも、もう完全に離すことが出来なかった。何より貴方が、私との生活に並行して、日々汚されている地獄が耐えられなかった。
だから私、この世を離れることを選んだのに。
なんでこんな、罰。地獄。
ねえ、私に罪があるとしたら、貴方を信じていたことなのかしら。信じず管理して、硬く束縛して、首輪でも付けて、その愛しい分泌液を卑しい蜂蜜屋のように、私が独り占めしたら良かったの?
罪らしい行いが正しくて、貴方を尊重した愛ある行いが罰だなんて、救われない。
彼から溢れる甘い蜂蜜のような分泌液を、女が舐め続ける。
私から溢れる嫉妬は、何も変えず、私を殺すこともなく苦しめていた。
nina_three_word.
〈 蜂蜜 〉
〈 分泌 〉
〈 嫉妬 〉