kurayami.

暗黒という闇の淵から

/ワンデイ

 ゆめ、夢見てた。

 なん、だっけ。

 みんな死んじゃったかも。

 でも、私は幸せだった。

 ん、まだ眠いや。

 でも、お風呂入らないと。

 仕事に遅刻しちゃう。

 蝉が鳴いてる。今年初かも。

 眼鏡が見当たらないよ。

 あった。レンズ汚い。

 私にお似合いね。

 お母さん、おはよう。

 ご飯、お刺身? 朝から豪華ね。

 大丈夫だよ、今日は食べるから。

 お風呂入ってくるね。

 本当は、食欲なんて無いんだけどなあ。

 けどお母さん、安心した顔してた。

 それにお刺身はちょっと嬉しい。

 ああ、シャワー冷たい。

 夏場でも、出始めのシャワーは変わらないんだ。

 ずっと、このまま、何百回も変わらない。

 このまま、おばあちゃんになっちゃうんだろうなあ。

 あれ、タオルがない。

 お母さあん。タオル、タオルちょうだい。

 お母さん。

 ありがとう。

 濡れちゃうと、体力がなくなる。

 重たくてしんどい。

 ヒトは海から来たなんて信じられないな。

 きっと、海から来たヒトは、怠惰な方。

 そういえば、お刺身だったの、忘れてた。

 鯛のお刺身。透き通っていて、綺麗。

 美味しそう。なのに私は。

 いただきます。

 外、曇ってる。

 今日、雨降るの?

 午後から晴れるんだ。

 そう。なら、でも、心配。

 あ、やっぱり、美味しい。

 でも、噛むのに疲れちゃう。

 美味しいのに。

 誰か、私の代わりに噛んでほしい。

 口移し。できるなら、あの人がいい。

 なんて、朝からいけない。少し破廉恥。

 ほら、そんなこと想うから、お腹いっぱい。

 ごめんなさい。ごちそうさまでした。

 お母さん、今日は七時までには帰るね。

 うん、そのつもり。傘持っていく。

 いってきます。

 いつもより、全然涼しいや。

 大好きな灰色空。

 夏はこんなに頼もしいんだね。

 みんな、どうして曇り空を嫌うのかな。

 こんなにも表情豊かで、綺麗なのに。

 太陽光のことが好きなくせに、夏は嫌うじゃない。

 まるで都合の良い恋人ね。

 なら、私と曇り空は長年の夫婦。

 たまに涙を流すのは、生きてる証拠。

 職場までの坂、全部なくなれ。

 登って、降りて。

 平坦になればいいのに、もう。

 この流れる汗が、バス代三百円。

 私の汗は、三百円。

 あ、おはようございます。

 おはようございます。

 ああ、涼しい。

 おはようございます。

 職場の冷房、好きになれない。

 良いのは最初だけ。

 寒くなるもん。

 おはようございます。

 今日の朝礼、いつもの人じゃないんだ。

 おはよう。

 え、前髪揃ってるね、じゃないよ。

 おはよう。挨拶は大事だよ。

 その人に会ったって確認。記録。

 挨拶は特別なこと。

 まあ、君からしたら、私なんて。

 かもしれないけど。

 かたかた、かたかた。

 かたかた。

 かた、かた。だ。

 お昼休憩まで、あと十分。

 なにをしよう。

 本を読む。決まり、決定。

 かたかた。

 ご飯は……あ、お昼。

 自販機のツナパン。売り切れてる。

 まあ、いっか。

 お腹空かないもん。

 私はあの子と一緒。活字でお腹いっぱい。

 ぺら。ぺら。

 午後もまた、かたかた。

 頑張ろうっと。

 かたかた。かたかた。

 私、いつまでこうして、かたかた。

 やだなあ。帰りたい。

 この時間、電車に乗って遠くに行けたなら。

 きっと気持ち良いのに。

 かたかたする時間。

 電車に乗って遠くに行く時間。

 あっという間になるのは、かたかたする時間。

 だって、ほら。もう定時。

 馬鹿みたい。

 お先失礼します。お疲れ様です。

 うん? 先帰るよ。

 君は頑張るんだ、偉いね。

 でも私は先に帰るよ。

 お疲れ様です。

 お疲れ様です。

 お疲れ様……あ、どうも。

 ええ、どうも。また応援いきます。

 お疲れ様です。

 疲れたな。

 でもこうして、身体も、時間も。

 消耗して、生きてる。

 きっとそれは、朝と夜のため。

 だから私は帰るんだ。

 少し、もあっとする。暑い。

 夕暮れの蝉が鳴いてる。

 かなかなかなかな。

 それに、遠い空。青と赤が混じる空。

 綺麗だとか寂しいだとか、言い訳にしたい。

 電話したいけど。夜まで我慢だ。

 ただいま。

 お布団、太陽の匂いがする。

 疲れた。

 だから、ごろごろするのも許されるもん。

 ごろごろ。

 でも、なにもする気も起きない。

 ご飯を食べることも。

 詩を書くことも。

 ネットを見ることも。

 何かを、したいという気持ちは。

 私の心は何処に行ったのかな。

 ああ、でも、一つだけ。

 はやく、声が聞きたいな。

 だから、やっぱり、それまで詩を綴ろう。

 想うがままに、自由に。

 今日あったこと、想ったこと。

 何かあったかな。

 やっぱり、心が、迷子。

 ねえ、もしもし。

 こんばんは。でももう寝る時間だね。

 だって貴方、声が眠そう。

 私? 私は今日、いつも通り。

 なんてこともなかったかな。

 ねえ、今日ね、蝉が鳴いてたよ。

 夕暮れのやつも。ねえ。

 寝ちゃったの?

 おやすみなさい。 

 

 

 

 

 

nina_three_word.

〈 口語自由詩 〉