kurayami.

暗黒という闇の淵から

 私の魂はもう、私だけのモノとは言えない。
 酸素のように貴方の言葉を必要としてる。
 中毒。ああ、言葉は呪い……だなんて言うけれど、まさにその通りで、一度内側に焼かれてしまえば簡単に取れることはない。貴方の言葉はとても鋭いの。もし私に口がなかったら、貴方の言葉に殺されていたかもしれない。それもまた救いはではあるけれどね。現に貴方の言葉に溺れることができて私は幸せ。
 言葉は日々の中で常に交わされる。私も負けじと貴方を呪うしかないの。ええ、自分の身が可愛くて仕方がなくて、殺してしまえば良いと思えるほど貴方が愛しくて、その抉るような呪いの言葉が欲しいから。殺し合い愛し合い。交わすのを止めてしまえば、私か貴方が死ぬまで。カードで作られたタワーみたいだわ。そう思うと案外脆そうだけれど、このままずっと、永遠に私たちが私たちで壊れることがないこと、わかっているのかしら。
 貴方の言葉に私の感情は、とても靡いている。貴方もきっと。私と離れると麻薬中毒者みたいな顔してるから、それはもう酷く靡いたのね。思想の波に、世界の風に。ゆらゆらと心を揺らして、酔って、吐いて、空っぽにして、満たされて。やっと悦んでいる。そしたら私の中が貴方への想いばかりになってしまったの。貴方に靡き続けて脈打つ私の感情。悔いはないのよ。だから、同じように私も貴方を靡かせて酔わせてあげる。
 交わして靡いて、言葉も思想も、私たち二人分。
 そこに境目を考えるだなんて、馬鹿馬鹿しいわ。
 私たち深く綯い交じって、同じ魂になっていた。
 二人で一つの魂なの。ねえ、見えない血管と骨と肉で私たち繋がってるのよ。無理に離れようとすれば血液は溢れ、心は痛みに苦しみ、身体は腐敗していく一方でしょうね。もし、そこまでして私から離れたいというのなら、笑って一緒に死んで見せるだけ。ああ、最後までずっと一緒が約束されているだなんて、嬉しくて恥ずかしい。記憶の終わりに残る貴方の言葉は一体どんな重みを持っているのか、想像もつかないわ。考えたらお腹が空いてきちゃった。ねえ、貴方の言葉をもっとちょうだい。その呪いのナイフのような言葉で私を刺してみせて。
 ねえ、貴方に悔いはないのかしら。もちろん私は幸せに満ちているけれど、貴方は。でもどんなに何を想っても貴方はもう逃れられないし、喚くというのであればその言葉もまた私のためにしかならない。
 悔いがあるのなら教えて。
 貴方の後悔も、幸福も、全部、私のモノなのだから。
 もちろん、私は貴方のモノ。
 
 

 

 

 


nina_three_word.

〈 靡く 〉
〈 交わす 〉
〈 綯い交じる 〉