一等星のように、夜空の主役になるような女の子がいた。
可愛くて優しくて、話し上手の彼女は、輝いていて、学校の主役で、男の子からも、女の子からも好かれていた。もちろん、私も彼女のことは好きだ。
劣等星の私は、影ながら彼女を見ていた。どうしたらそんなに輝けるのか、知りたくて。
彼女は私と違って、お人形さんみたいに顔が小さかった。外国人さんみたいに背が高かった。硝子細工みたいな綺麗な眼を持っていた。女優さんみたいにさらさらのショートヘアをしていた。猫みたいに甘く可愛い優しい声、でも突然どきどきするような色気を声に込めるときもある。急にそんな声を出すから、なんだか、ずるい。
ずっと見ていると私も、彼女のようになりたいと思うことはあった。そんな女の子になりたいって、願うことはあった。彼女のように、みんなに見られる一等星でありたい。私も、みんなから愛されたい。ううん、愛されたい。
でもきっと、彼女のように輝くことは、できないと思う。
彼女が一番輝いている限り、劣等星の私は、見向きも、されないんだから。
窓際の席で、いつも本を読んでいる女の子が気になっていた。
いつも真剣に本を読んでいる。学校じゃ読まないけど、私も本が好きだから何を読んでいるか気になった。でも、話しかける勇気なんて、私にはない。
あの子が時々、私を見ているのはわかっていた。わかっていたけど、なんだかその目は冷たくて、そのせいで、素直に話しかけることができない。
その冷たい目で見られると、動けなくなる。心臓を掴まれるような。でもこれはきっと、恐怖なんかじゃなくて、何だろう、同性同士で変かもしれないけど、惚れ惚れとする、みたいな。
私は、あの子のそんな目線が、大好きになっていた。冷たくて大人びた目、どこか哀しそうな目でもあるかな。なんだか、想って想って、その考えていたことがそのまま凍ってしまったような、氷柱みたいな目をしてるの。ああでも、本人は小さくて、可愛い。きっと、私の膝の上に乗って収まるサイズだと思う。そんなとこも素敵で、好き。
ううん、そう、私はあの子のことが、好きになっていた。
けど、私が話しかけたら、その氷柱は、溶けちゃうのかなあ。
………
放課後、一等星の少女は忘れ物を取りに、教室へと戻った。
一等星の少女が、教室に入ると、そこには氷柱の少女が本を読んでいる。
窓から差し込んだ光が、カーテンを通して色を付け、床を照らしている。
氷柱の少女は、教室に入ってきた一等星の少女に気付き、目を向ける。その目は、尊敬と嫉妬の目。
正面からその目を見た一等星は、思わず氷柱に近づく。
氷柱を自らの熱で、無邪気に溶かしてしまうとも知らずに。
nina_three_word.
〈 無邪気 〉
〈 一等星 〉
〈 氷柱 〉