kurayami.

暗黒という闇の淵から

2017-12-01から1ヶ月間の記事一覧

だからとニヒル

別れて以来、久々に彼と連絡を取った。二年ぶりぐらいに。『久しぶり、元気だった?』 なんてことのない彼の返事。私は淡々と返し続けて、固まっていた想いが解れて、どろどろに溶けていくのがわかった。ああ、良かった。電気の消えた十二月の自室は、窓から…

nina 10月-12月 日付別ワード一覧。

10月1日〈あやなす〉〈ひよめき〉〈かんばせ〉#nina3word20171001 10月2日〈ショッキング〉〈カミングアウト〉#nina3word20171002 10月3日〈中心〉#nina3word20171003 10月4日〈こぼれ話〉〈図々しい〉#nina3word20171004 10月5日〈昇華〉〈霊び〉〈無為〉#n…

nina 8月-9月 日付別ワード一覧。

8月1日〈見せしめ〉〈キャンペーン〉#nina3word20170801 8月2日〈爪やすり〉〈裏技〉〈口調〉#nina3word20170802 8月3日〈今更〉〈懐柔〉〈貢献〉#nina3word20170803 8月4日〈メロンソーダ〉と恋。#nina3word20170804 8月5日〈長靴〉〈日焼け〉〈予定調和〉#…

ここに

長い綴りを、僕はやっと終えたようです。 誰かを救えたでしょうか。 この一年、ずっと神さまになりたい想いで続けていました。誰かの、みんなの。希望の光のようなモノでありたいと思っていました。罪で愚かな願望です。しかしそれが虫の息で今にも死にそう…

終心

私は何かに呼ばれるように、外へと出た。 水曜午後三時半、雲のかかった冬の空が高く舞い上がってる日。洗濯も課題も全部やることは済んでいた。コンビニへ行こうにも買いたい物は何も思いつかない。一体、私は何に導かれているというのだろう。そもそも気の…

憧憬

僕は僕を失っている。 過去という積み重ねを。履歴という、僕を。 長い放棄癖の果てに「気付けば」というモノだった。失ってしまったのには理由が幾つかあって、まず第一に自身をどうでもいいと思っていたから。第二に目先の未来への希望に縋っていたから。…

グラデエション

「私は、この部屋の窓を酷く気に入ってるよ」 男は窓から溢れる眩いばかりの陽を背に、暗い部屋の奥へと話しかけた。「夕焼けが好きだからね。景色の向こう側へと沈む様子をいつまでも見ていられる。特に珈琲を淹れることもなく、ただ黙って手ぶらで眺めるだ…

眼と妄

時折、彼は空き教室で項垂れていた。電源が切れたように、全てを投げ出したように。明るい子ではなかったけれど、愛想笑いを絶やさないような子だったから、たまに見かけるその姿に私は惹かれてしまっていた。 普段は耳に掛けている髪が、目にかかっている。…

夜から朝へ

一年という時の中で、冬の午前四時はたぶん、一番冷たい。 貴女といても。いや、貴女といるから。「空、ほんの少しだけ明るくなってきたね」 全てを終えた裏路地。僕の隣で温くなった缶コーヒーを手に持って、彼女は震える声でそう言った。コートとかタイツ…

まじないの怪物

男が一歩を踏み出した時、木造の床が泣くように軋んだ。「じゃあこの貝殻は? いくらよ」「お前さんじゃ、買えないぐらいじゃろうなあ」 欠けた桃色の貝殻を手に取った男に対し、支払い口に座った老人が答える。 小さな豆電球が無数にぶら下がった店内。傾い…