kurayami.

暗黒という闇の淵から

喪服みたいな制服

 制服が真っ黒で良かった、と思った。
 でも、学校で会ってるみたいで現実味がないなあ、これ。

 死んだ晴川は、友達だった。

 晴川は、高校入ってからの付き合いだった。なんだか腑抜けていて、俺のちょっかいを、なんでも許すようなやつだ。それが、まさか高校在学中に死ぬだなんて、思わなかった。そのなんでも許しちゃうような、ヘラヘラした態度が、なんでも寄り付かせてしまいそうで、死んだと聞いたときは、少し納得した。
「友人はさあ」
 晴川は、俺のことを“友人”と呼んでいた。俺の本名を文字って、友人。
「彼女とか作らないの?」
「ええ、なんだよその質問。急にきもいな」
 パンを齧ってたから、昼飯時だったと思う。
「お前が彼女作りたいって話?」
 絶対そうだと思って俺が聞いた。
「いや、まあ、そうんなんだけど」
「わかりやす過ぎかよ……なにその、男子高校生らしい悩み」
「えっ、男子高校生じゃん俺ら」
 茶化すつもりで言った言葉を受け止められた。こういうやり取りは晴川と多い。
「んで、友人はどうなんだよ」
「俺? 俺は、うーん」
「あいつは? 五月女は?」
 同じ委員長で、確かに交流はあるけど。
「ない、ない。想像できない」
「友人は好みのハードル高そう」
「高いぞ。俺はお前みたいに、内田を好きになったりはしないな」
「待って。なんで知ってるんだよ! おい!」
 そんな、気色悪い恋話したの、つい四日前だぞ。晴川。
 お前、なに気持ちよさそうに寝てるんだよ。寝顔きもいぞ、晴川。
 ほら、お前の後輩の前田だっけ、悲しそうな顔してるじゃねえか。
 おい、晴川。
「友人さん」
 晴川の弟に、声をかけられた。
「もし良かったら、火葬まで見届けてくれませんか? その、少なくて……友人さんが来てくれたら、兄さんも喜んでくれると思うんです」
 あいつが喜ぶかはわからないが、晴川の家は、ほんの少し複雑で、父がいなくて、親戚がいない。
 俺はそれを承諾して、友人代表として、火葬を見届けることにした。
 初めての葬式、火葬が友達だとは思わなかった。火葬場の外は、思っていたより熱くなくて、本当に今、晴川は焼かれているのか、実感がない。
 収骨、というのは、どうやら火葬を見届けた人がするものらしく、俺も例に漏れず、することになった。たぶん、普通ならクラスメイトの収骨なんてしないんじゃないか。
 母、弟を周り、俺に順番がきた。
 晴川だったものを、運んで、納める。
 そのとき、骨の下に、焼き残された、小さな小さな晴川を、見つけた。
 ……本当に死んだのか。
 今更になって現実を突き付けてきた肉片を、俺は骨と一緒に壺に収めた。

 

妖怪三題噺「肉 友達 式場」

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