kurayami.

暗黒という闇の淵から

戯曲にもならない

 なあ、そこのお前、ああ、そこのお前だ。悪いが聞いてくれないか。なに? 酔っ払いみたいだ? 死にしそうだ? いい、どうせ助からない。いいから聞けよ。
 俺の、狂気の言葉を、悲劇を、復讐劇を。

 この悲劇の卵は、朱雀先生が紅櫻先生を殺害したとこを、目撃したところからだった。

 夕暮れに染まった、放課後の、美術室。
 朱雀先生が、紅桜先生の穴という穴に、油絵の具を注いでいた。その様子から見るに、確実に殺したかったのだろう。きっと、藍玉先生の取り合いのいざこざではなかろうか。
 俺の担任を、紅櫻先生を殺したのだ。俺のただ一人の担任を。
 元々、朱雀先生は気に入らなかった、殺してやろうと思っていたのだ。だから良い機会だ、狂気になるには、ちょうどいい。これは言い訳なのだ。

 とりあえず、近所にいた、朱雀先生に似た女を殺害してみた。殺害してみたら、これがおかしい、近所で、昔から親しくしていてくれたお姉さんだったのだ。おかしい。可笑しくて笑ってしまいそうだ。
 ひとまず俺は笑ってみた。それはとても、狂気だろう? 狂気だと言ってくれ。
 するとどうだ、これがどうだ、ショックを受けたその近所の姉と付き合っていた俺の親友、前田が手首を切って自殺したのだ。よく成功したものだと、俺は狂気に満ちた笑いをした。あーちゃんちゃらおかしい。
 死ぬことはないだろう! 俺は笑って、泣いてしまった。

 朱雀絶対許さない。

 次の日いつものように登校したところ、前田の弟に目を付けられてしまった。どうやら俺のせいで前田が死んだと思っているらしい、そんな馬鹿な。悪いのは朱雀だろう、なぜ俺を恨む。おかしな話だ。
 それで、いつものように、いつものように、学校に通い続けていたいたところでだ。俺は前田の弟に、美術室に呼び出された。ああ、たぶん殺される、殺されるだろう。あいつは、カッターを持って待ち伏せていた。敵討ちというやつだな。俺は懐からナイフを取り出し、殺しあった。美術室にあったありとあらゆるものを使った。絵の具から、デザインナイフ、彫刻、塗り消し、彫刻刀、マスキングテープ、ありとあらゆる道具を使い、俺たちは殺し合いをした。俺もあいつも、まるで美術品のように削りあい、彩を与え、真っ赤に、色彩に、作りあった。あいつはなかな美しい男になったよ。
 死に際の中、前田の弟は、朱雀と一緒に企んだと呟き、死に至った。朱雀、絶対に、許さん。
 ついでに、この殺し合いの最中、前田の弟と朱雀が俺への罠として用意したホッチキスホットドックを、藍玉先生が食べて死んでいる。朱雀は、絶対に許さない。
 致命傷を受けながらも、俺は職員室にいた朱雀を、内臓という内臓を全て引き摺り出し、全てをしゃぶり、血という血を全て抜き、職員室に彩を与え、殺してやった。だからな、俺はもう、満足だ。
 で、どうだ。俺はもうすぐ死ぬわけだが、なあ、この話、戯曲にでもならないか? なに? 似たような話がある? 知らん知らん。お前が戯曲にしろよ、任せたぞ。俺はもう満足だ、疲れた。


 

妖怪三題噺「ハムレット 卵 言葉」

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すぺしゃるさんくす

登場人物の名前を今一緒に飲んでる眼鏡さんが考えてくれました。

飲んでます。