kurayami.

暗黒という闇の淵から

勝敗の行方

 負けず嫌いの二人は、高等学校に入学し、同じクラスの振り割られた時に初めて出会った。
 久野耕太と長谷川美優。共に容姿も、学力も、運動能力も、平均。しかしその負けず嫌いは、誰よりも強い。
 そんな二人が初めて競ったのは、ある登校時。校門前で二人は偶然揃い、早足になり、気付けばどちらが先に教室に着くかと、競争をしていた。
 その日以来、二人は何かと競うようになる。
「久野、国語の点数」
 長谷川が、返却されたテストを手に久野の前に立った。
「七十二点」
「三十点も上……! 久野は文系なんだね」
「やった。というか、よくその点数で挑んできたな……」
 久野が呆れる。
「もしかしたらと思って。今度は、今度は数学で勝負ね」
「勝てる自信ないけど、負けたくはないな」
 二人は、勝ち負けの回数より、その場の勝敗に拘っていた。
 互いが互いを〈宿敵〉の枠に当てはめ、勝つことによる快楽を求め、勝負し続ける。
 時が経つに連れて、二人の勝負は規模が大きくなっていった。ゲーム、スポーツ、ギャンブル。ある時は生徒会長の座を競い、味方を多く作るように競った。二人はただ、勝ちたい一心だった。
「長谷川、今日は星の知識で勝負しよう」
 久野が長谷川の席に近づくと、周りが騒つく。二人の勝負は、ちょっとした名物となっていた。
「私が星好きで、毎晩夜空を見上げてるって知ってるの?」
「知らない、星好きなんだ? いや、勉強してきたから勝てるよ」
 二人は勝負をするのに、努力を怠らなかった。次第にそれは二人の成長に繋がり、成長を考える過程で互いを大きく意識させた。
 勝負が日常の高校生活も、三年になり終わりが近づいた。負けず嫌いの二人の話は、校内中に広がり、いつの間にか「卒業式に大きな勝負で決着をつける」と噂され始める。
 久野も、長谷川も落ち着かなかった。噂は二人の中で真実味が増す。口には出さなかったが、二人は卒業式の勝負を考えた。
 久野は、決着をつけたくないと、考えていた。卒業式が近づくに連れ、焦燥感が増す。久野は迷った末、卒業後も勝負を続けたいと、告白することを選んだ。
 そして、卒業式の日。誰もいない教室に、二人は集まる。
 久野は言おうとしていた言葉を、吐き出そうとするが、恥ずかしさに負け、なかなか言えない。
 一方、長谷川は、久野に近付き、隠し持っていた文鎮で久野の頭を殴った。電気の消えた、薄暗い教室に打撲音が響く。久野は痛さに声を漏らしながらも、長谷川を止めようとするが、文鎮が久野の腕をすり抜け、こめかみに入った。
 久野は意識を失い、長谷川は久野がもう起きないよう、殴り続け、殺害。
 長谷川は、決着を、はやく決着をつけたいと、望んでいた。
 それは、久野からの勝利を独占するため。
 唯一無二の、最後の勝利が欲しいために。


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〈 宿敵 〉を倒す。