私の前髪は、左から右にかけて長い。左目は眉毛が出るぐらい。右目は前髪で隠れるようになっている。
前髪をまっすぐ斜めに、切り揃えている。個性的だってよく言われるけど、この前髪には理由がある。
私の右目が隠れるように長いのは、右側に立ちたがる君に、私の醜い虚ろな目を見られないためだ。
私の目が醜くて虚ろなのは、自身の性格が目に反映されている。目は人の心を表すというからね。
私は酷く、貪欲なんだ。その貪欲は、右側の君に向けられていることを、君は知らないと思う。
君のことは愛しているし、大切にしたいよ。だけど、その一方で君のことを欲しがっている。
私の想いは、愛情と欲が対になって働いている。だけど、非対称のようにその強さが違う。
君への想いは愛情よりも、欲の方がとても強いんだ。醜いよね、失望、してしまうよね。
そんなことも知らずに君は私の右側で笑っているんだ。無知で、とても可愛いらしい。
そんな君のことが、愛おしくて欲しくなる。例え君が不幸になってもいいと思える。
ああ、また、そんなことを思って、私は醜い。そんなんだから目が醜く濁るんだ。
そのことを忘れないために、私の左目は出ている。左腕の現実を、見るために。
私の左腕には、無数の懺悔と後悔と我慢が、線になって赤く、刻まれている。
私の懺悔は心の内で君を大切にしきれていないこと。本当にごめんなさい。
私の後悔は君を欲しいと思い始めたこと。愛情に留めていれば良かった。
私の我慢は君に手を出すこと。日々、強欲を抑えるために必死なんだ。
懺悔と、後悔と、我慢を宿した左腕を見るために、左目を出ている。
自覚するために、意識するために。忘れないために。私は、醜い。
君は何も知らずに、私の左腕を心配する、優しいね。好きだよ。
だけど、その無邪気な目で、私を見ないことを心から願うよ。
君は私のことを、大人しくて優しいと言うけど、違うんだ。
でもどうか、誤解をしたまま、虚像の私から離れないで。
だって、私には君を手に入れることは、到底できない。
虚像の私を好きだって言うなら、私はそれが本望だ。
それはとても哀しいけれど、側にいてくれるなら。
私は喜んで、いつまでも、虚像のままでいよう。
そのためにも、私は、醜い虚ろな目を隠そう。
私の真実を確認するために左の目で見よう。
馬鹿で可愛い君を、永遠に騙し続けよう。
本当は君にいろんなことをしたいんだ。
君のことを、私の手で不幸にしたい。
君の身体の全て自由に搾取したい。
君を、私の部屋に存在させたい。
君を一人ぼっちにしたいんだ。
許されないことは知ってる。
だから、思うだけの強欲。
最低なのも、知ってる。
もちろん君のことは、
愛してるよとても。
本当にごめんね。
許して欲しい。
求めること。
想うこと。
非対称。
永遠。
欲。
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〈 アシンメトリー 〉