kurayami.

暗黒という闇の淵から

2017-01-01から1ヶ月間の記事一覧

リピート

身体に篭った熱で、目が覚めた。近くには、ストーブがあって、篭った熱は、これのせいかとわかった。なんでこんな近くにあるんだろう、暑くてしょうがない。しかも、椅子に座って寝ていたせいか、背中が痛い。それに、なんだか、嫌な夢、気分の悪くなる夢を…

ハルシオン

「おはよう」 誰もいない台所に、私の声が響いた。机の上に、値引きされたあんぱんだけが置いてある。 返事を望んだわけでは、なかった。ただ一言「おはよう」と言えば、私は朝に生きていると実感できるだけ。「いただきます」 マグカップに牛乳を入れてあん…

その名が辿るもの

「あのね、しってる?」 「なになに」 「おおつき山のね、うら山にはね」 「うらやま?」 「おおつき山の、うらにある山のこと!」 「あー……しってる、しってる」 「そう、その山にね、入るとね、向こうにも、こことおなじ町があるんだって」 「ええ、どうい…

真っ赤な林檎

「あのね、りんごを見たの」 縁側から声がした。麦わら帽子を被り、水色のワンピースを身に纏った少女が、つま先を伸ばし、にこにことしている。「あらあ、ここら辺に林檎の成る木なんてあったかしら」 少女の祖母は、頬に手を当て考える。「本当に見たんだ…

悪しき実

前田一郎は残された側の人間だった。 二週間前。大川椿が自殺をした。 大学一年生と、四年生と先輩後輩の関係にあった前田と大川は、共依存関係にあって、恋人関係ではなかった。お互いその距離に、落ち着き、甘え、必要としあう巣に、居心地の良い時間を過…

色彩による乾き

八高線という、八王子と高崎を結ぶ路線がある。八王子市民から見ても滅多に使わない、それこそ路線沿いに住んでる人しか使わないような、ローカル路線。十二分に一度は電車が来る中央線への乗り換えができる駅の中で、三十分に一度しか来ないという、異質を…

あれが好き、これが嫌い。

昨日、酔った勢いで相楽愛花に嫌いな食べ物、好きな食べ物を箇条書きに送っていました。記憶はあります。やっててお腹が空きました、朝の5時ぐらいに。 好き嫌い、特に嫌いなものが多くて嫌になります、紫蘇とか本当に無理です。 記録として載せます、千代恋…

輪廻転職

仕事に追われ、腕時計との睨めっこの日々。 その日も、いつものように、書類の山を片付け、終電に間に合わず、途方に暮れて、浅草の街を歩いていたとき、一匹の黒猫に出会った。 それが、人としての最後の記憶だ。 現世では、また年が明けたらしい。「うちの…