二月十四日 火曜日
ついに戦闘服の実験段階に入った。狭い室内で論文ばかり書いてるよりかは、こうして実験をするほうが気が晴れる。
このプロジェクトに名前を求められ、今日の日付に因んで〈ヴァレンタイン〉と名付けた。意味はどうでもいい、呼び名がないのは確かに不便だったが。
ヴァレンタインのシステム作製に、二年の月日がかかった。倫理がどうだとか、反対意見も多く、なかなか実行できなかった。愚かな連中だ。
遂に、遂に明日から実験だ。腕がなる。
二月十五日 水曜日
一日目から素晴らしい結果だ。良い。
戦闘服ヴァレンタインは、頭からつま先までの全身を包み、刺激に呼応して力を発揮する仕組みだ。
だから、実物を見たときは、それが叶っていて感動をした。その機能を持ちながら、防御の役割が薄いのだ。素晴らしい。
被験体に使ったのは、年齢二十二の男性。身長百七十六センチ。体重七十二キロ。
早速被験体一号に着せ、刺激を与えてみた。
細い針を、一部一部に刺す実験をする。結果は成功。各々の向上が見られた。
被験体一号は、眼球を刺された時点で失神。実験はそこで終えた。
明日も被験体一号は使えるだろう。
二月十六日 木曜日
実験二日目。被験体一号が絶命。だがしかし、素晴らしい。
昨日、眼球を刺激したことにより、視力の向上が見られた。しかし眼球への刺激が脳に繋がったらしく、終始被験体一号は思考を停止していた。改良が必要な点となる。
しかし筋肉の活性化は衰えた様子はなかった。
思考実験も兼ねていた実験は中止になり、被験体一号の処分に迷った末、急遽新しい実験を行った。
ヴァレンタインを着せたまま切り刻んだ後の結果が知りたくなった。その思考停止に加え、筋肉の活性をしている状態から興味が湧いたからだ。
機会にかけ、被験体一号を、三枚下ろしのような状態にし、頭から下は刺身のように切り分けた。
結果は素晴らしいものだった。ヴァレンタインが付着してる部位は、生命として維持されていた。(一時間後には活動を停止)
首だけとなり、まるで恐怖に近い感情のリズムで、被験体一号は二時間ほど呼吸をしていた。
良いデータが取れた一日となった。
二月十七日 金曜日
実験はなく、この二日間のデータをまとめ、ヴァレンタインの調整。新しい機能を思いつき、過去のバイオ実験と合わせ構成をする。
少し疲れた。
二月十八日 土曜日
昨日に引き続き、実験のデータをまとめ、ヴァレンタインの強化の調整をする。明日は新しい実験が出来ることだろう、楽しみだ。
そういえば今日、廊下で反対派の男と喧嘩になった。新米の兵士だった。気に食わない、被験体三号はあの男にしよう。
二月十九日 日曜日
被験体二号。年齢二十一。女性。身長百六十センチ。体重五十四キロ。
初対面から睨めつけてきた、気に食わん。すぐに実験に取り掛かる。
新しいヴァレンタインに、脳への刺激調整を加え、再生機能を付けた。
指を切るも、すぐに再生し、何度切っても指が生え、再生の面は満足がいった。(しかし、どういうわけか、たまに二股に生えてしまう。これは調整が必要だろうか)
被験体二号が苦痛に叫び声を上げていた。良い気味だ。
実験外になったが、腹、右胸、左足にナイフを刺す。これにも叫びながら、再生をしていた。
もちろん、筋肉の活性化は見られ、被験体一号の時より安定して見られた。
素晴らしい。
二月二十日 月曜日
実験途中だ。長引き、朝方までかかる予定となった。
実験開始早々、被験体二号に蹴りを入れられた。信じられない。
私は、ありとあらゆる拷問を加え、痛みを与えた。
素晴らしいデータだ。
3・14 Tue
ヴァレンタインプロジェクト責任者、坂上博士の記録日記を、資料としつつ、新規プロジェクトの記録帳にします。
ヴァレンタインプロジェクトの失敗は、痛覚の無限性にあります。
事故当日、実験場には幾つかの拷問の痕跡が見られ、坂上博士が被験体二号に対し、私念を込めた実験を行っていたと見られます。
与えられ続けた痛覚により、活性化した細胞により暴走し、被験体二号は坂上博士を殺害し、脱走をしました。
制御出来なければ意味がありません。これを反省し、新規プロジェクトではヴァレンタインで使われた〈心拍〉に呼応するシステムを使った、新しい戦闘服の作製に入ります。
プロジェクト名は、ホワイト。
nina_three_word.
〈戦闘服〉〈刺身〉〈指切り〉